NEW CHIBA TRAIN NET

鉄道模型を中心とした内容のサイトです。

2024年物流問題/「鉄道貨物の輸送量倍増」はどこまで対策となり得るか。

政府の方針:今後10年で(船舶や)鉄道による貨物輸送量を倍増

現在、全国で深刻な問題となっているトラックドライバー不足。

特に来年の4月以降は、乗務員の時間外労働の規制強化に伴って、更に人手不足が更に深刻化して日本の貨物輸送が停滞してしまう「2024年」問題がクローズアップされてしまいます。

政府は、先月(2023年10月)に物流問題の関係閣僚会議を開き、「2024年問題」への対応をまとめました。

この中では、2030年度には輸送量が30%以上減る恐れもあるとして、輸送手段をトラックから船舶に振り替える「モーダルシフト」を推進し、今後10年程度で船舶や鉄道の輸送量を倍増させる目標を掲げました。

船舶については別として・・・

目標の趣旨は分かりますが、鉄道貨物の担い手となるJR貨物側があまりにも多くの問題を抱え過ぎているので、今後10年で倍増するのは、かなりハードルが高そうです。

仮に、その計画が実現できたとしても・・・

その「鉄道の輸送量倍増」は、2024年物流問題やドライバー不足に対してどこまでその対策となり得るのでしょうか。

鉄道によるメリットが発揮されるのは「中・長距離輸送」

自分も勉強不足なので、ここで鉄道による貨物輸送の流れ・作業フローを確認してみました。

現在の鉄道による貨物輸送の体系は、「車扱い」と「コンテナ扱い」に分類できますが、ここでは一般的なコンテナ扱いについて取り上げます。

基本的なコンテナ扱いの輸送フローは以下の図のとおりです。

鉄道輸送の場合であっても、発荷主(発地)・着荷主(着地)がそれぞれ最寄の鉄道貨物駅に隣接している場合、または荷主先まで専用線が敷設されている場合などを除き、末端区間はトラック輸送(コンテナをトラックに載せて輸送)になります。

また、鉄道輸送の場合、当然のことながら、発駅と着駅ではトラックから列車への貨物(コンテナ)の積み替え作業が発生します。

トラック輸送の場合、発荷主(発地)で貨物を積んだ後、そのまま着荷主(着地)までそのまま走るので、鉄道輸送のように途中での積み替え作業がありません。

そのため、近距離輸送だと鉄道はトラックに比べて手間やコスト・時間も多くかかり、デメリットばかりが目立ちます。

鉄道による輸送部分の距離が増えれば増えるほど、末端での積み替え作業やトラック輸送によるデメリットが輸送全体に占める割合が少なくなるので、鉄道輸送の優位性が高くなってきます。

このため、「中・長距離輸送」の方が鉄道が優位になります。

輸送距離何キロ以上だと鉄道輸送にメリットがあるのでしょうか?

これについて、いろいろとネットで検索してみたのですが、「300km以上」とか、「500km以上」とかいろいろ言われているようで、よく分かりませんでした。

実際には発地~着地間の交通インフラ(例えば高速道路の有無など)などの条件によっても変ってくるので、一概には言えないのかもしれません。

ちなみに、かなりざっくりとした数字ですが、東京~名古屋だと350km、東京~大阪だと500kmぐらい、東京~博多だと1,100km程度です。

感覚的には、東京~大阪(500km)以上だとそれなりに鉄道にメリットがあるように思えますが、実際はどうでしょうか。

実際の鉄道貨物のシェアはどうか

JR貨物の資料(2019年度の陸上貨物輸送の距離別シェア)によると、鉄道輸送のシェアは・・・

中距離・・・401km~500kmでは3.2%、501km~600kmでは4,2%(非常に少ない)

長距離・・・901km~1,000kmでは29.0%、1,001~では33.1%と3割程度(それなり)

長距離になればなるほど鉄道の比率が高くなりますが、逆にいうと、優位性が高い1,000km以上でも鉄道のシェアは3割程度しかないともいえます。

(この数字は船舶による海上輸送は含まれていませんので、残りはトラック輸送ということになります)

ちなみに、鉄道の平均輸送距離はコンテナ扱いで約900km、車扱いで150kmとのことです。

単純な数字で見る限りでは、長距離においてもモーダルシフトが進んでいるとは言えません。

鉄道にシェアを増やせる余地はあります。

2024年物流問題(トラックドライバー不足)の対策(受け皿)

国土交通省の少し古いデータですが、2017年度の距離別輸送量の割合では、トンベースだと100km未満の輸送が全体の78%(3/4以上)を占め、その97%がトラック輸送によって行われています。

本来、鉄道輸送が優位であろう500km以上の輸送は僅か7%程度しかありません。

鉄道を含めた長距離輸送のモーダルシフトの推進はもちろん必要なことではありますが、「2024年」問題の解決への対策(ドライバー不足の受け皿)としては限定的なものになるのではないでしょうか。